境界の現在地
オーストラリアの映像作家スーザン・ノリーによるインスタレーション作品《TRANSIT》(2011)、および《SHOT》(2009)の撮影監督を担当。
両作品は、環境破壊や軍事活動、エネルギー政策など、人間と自然・国家と個人の関係をめぐる記憶や風景を扱った映像インスタレーションである。
《SHOT》では、核の影や軍事拠点の空間を静かにとらえ、国家権力が自然と交錯する不可視の領域に焦点をあてた。
続く《TRANSIT》では、震災後の日本各地での撮影を通じ、津波や原発事故の爪痕、桜島の火山噴火、ロケット打ち上げ、米軍基地演習といった断片を編み上げながら、現代社会における“移動”と“境界”の在り方を問うている。
どちらの作品においても、撮影にあたっては風景そのものが語り手となることを意識し、詩的な沈黙や映像の間合いを大切にした。
説明するのではなく、ただそこに立ち、光や音、空気の変化を待ち受ける――。
カメラを通して浮かび上がってくるのは、過去の痕跡だけでなく、そこに身を置く者の身体感覚でもある。
《TRANSIT》は2011年の横浜トリエンナーレに出展され、その後テート・モダンおよびシドニー現代美術館に収蔵された。